量子コンサルティング事業開始の背景と、CXO・IT部門が直面する課題について
2025.12.4
1. 事業開始の背景
近年、量子コンピューティングは研究開発段階から、金融・製造・物流・エネルギーなどの産業領域における具体的なPoC・導入検討の段階へ移行しつつあります。
- 量子クラウドサービスの整備により、自社でハードウェアを保有せずに検証が可能になったこと
- 最適化・機械学習・シミュレーションなど、ユースケースが増えたこと
これらにより、量子技術は「将来のための情報収集」から「実際の課題を解決できる手段」へと位置づけが変化しています。
この状況を踏まえ、当社は、量子技術を単なる技術検証にとどめず、経営KPIの改善とビジネス課題の解決につなげるコンサルティング事業として再定義し、本格展開することといたしました。
2. CXO・IT部門が直面する主な課題
多くの企業において、量子技術の検討に関して次のような課題が見られます。
(1)活用テーマとKPIの結び付きが不明確であること
量子最適化、量子機械学習、量子シミュレーションなどのキーワードは増えています。しかし、具体的な量子技術や量子アルゴリズムが、
- 自社のどの業務プロセスに適用し得るのか
- 売上・コスト・リスク・リードタイムなど、どのKPIにどの程度寄与し得るのか
これらが可視化されていないため、投資テーマとして優先順位付けしにくい状況が生じています。
(2)PoCから事業化への橋渡しが難しいこと
PoCにおいて既存手法を上回る指標が得られても、以下の点が明確でないため、経営としての最終判断に至らないケースが少なくありません。
- 本番システムとの統合方法
- 必要な運用体制・ガバナンス
- 投資額と回収期間の見通し
(3)量子技術を活用した事業化を推進できる社内人材・体制の不足
量子技術に関する勉強会などは行われていても、以下のような役割を担える人材・体制が十分ではなく、外部依存が続きやすい構造になっています。
- ベンダー提案の妥当性を評価できる
- 社内の業務テーマと結び付けて企画できる
- 経営層に対して意思決定材料を提示できる
3. アクティヴァーチコンサルティングの提供価値
当社はこれまで、DXプロジェクトにおいてPM/PMOとして、以下のような役割を担ってまいりました。
- 経営側の方針と現場の要件の橋渡し
- レガシーシステムと新システムが混在する環境での安定した運用
- マルチベンダー環境での利害調整と、プロジェクト完遂に向けた推進
この経験に基づき、量子技術の導入においても、単にアルゴリズムやサービスやツールを紹介するのではなく、以下を一体として支援することを重視しています。
- 経営課題との対応関係を整理した量子活用テーマとロードマップの設計
- PoCの設計・評価および本番システムの検討・設計・構築
- 導入後の運用・改善に向けた体制構築と人材育成
4. 今後提供するサービス群の位置づけ
本事業では、以下の3つのサービスを軸に展開いたします。
Quantum Strategy Advisory
(量子戦略アドバイザリー)
量子技術活用テーマの可視化・整理とロードマップ策定を支援します。
Quantum Project Planning
(量子プロジェクト企画・推進)
本番導入を見据えたPoC実施、及びその後の本番システム構築までをPM/PMOとして伴走します。
Quantum Education
(量子教育・人材育成)
経営層・推進リーダー・技術者層に応じた教育プログラムにより、自社内での企画・評価能力の向上を支援します。
※各サービスの具体的な内容につきましては、別途Journal「量子コンサルティング:3つのサービスの詳細について」にてご説明いたします。
5. おわりに
当社は、量子技術を「一部の先進企業の特別な取り組み」ではなく、多くの企業が中長期的に活用し得る経営インフラの一部と捉えています。
量子導入に関する検討状況や課題は企業ごとに異なりますが、CXO・IT部門責任者が投資判断可能な情報と選択肢を持てるよう、戦略・実装・人材育成の三つの側面から支援してまいります。